就業規則Q&A

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就業規則Q&A

就業規則Q&A

Q.

採用した社員が入社後にうつ病を患っていることがわかりました。それを理由に解雇することができますか?

A.

会社からの取り消し自由については、「客観的に合理的で社会通念上相当であること」が必要とされています。一応、心身の病気で勤務が困難であるというのはその中に含まれますが、うつ病により勤務が困難であるかどうかを従業員、従業員のかかりつけの医師、会社が指定した医師と相談の上で判断するようにします。

Q.

競業避止義務に違反した者に対し、退職金返還請求など、何らかの制裁をしたいが、そのようなことはできますか?

A.

職業選択の自由があるので、競業避止を課すためにはいくつかの条件があります。判例によると、競業避止の期間、場所的範囲、対象となる職者の範囲、代償の有無などを総合的に勘案するとしています。就業規則にこれらについての規定がなければ、退職金の返還請求は難しいでしょう。

Q.

会社のパソコンを使用してサイドビジネスをしている従業員がいます。サイドビジネスをやめさせ、パソコンも定期的にチェックして、その従業員を懲戒処分にできますか?

A.

まず、会社の備品を不正に使用したことに対する服務規律違反になります。パソコンは会社が貸与している備品ですから、中身をチェックすることは問題ありません。ただし、プライバシー侵害と言われないように、就業規則でその旨を定めておきます。次に、会社でサイドビジネスが問題となるのは、まずサイドビジネスをしていた時間は会社本来の仕事をしていないわけですから、職場離脱となる点です。さらに、就業規則に定めがあれば兼業禁止にも触れます。そして、サイドビジネスが会社の営業内容と同種のものであった場合は、競業避止義務違反となります。これも就業規則に定めてあることが必要です。これらの違反を個々の事案の事情によって、どのくらいの制裁処分を科すか決めることになります。

Q.

当社では営業マンに事業場外のみなし労働時間制を導入しようと検討しています。しかしこの制度をよく調べてみると「事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督がおよばず、労働時間を算定することが困難な業務」というのがみなし残業に適用され、「労働者が携帯電話を持ち、随時使用者と連絡を取り、指示を受けつつ労働をするような場合」は適用されないとあります。当社の営業マンは外回りをしていますが、アポイントの管理から次の顧客先への移動まで全て会社の指示により動いています。こういったケースでは事業場外のみなし労働時間制は導入できますか?

A.

いわゆる「事業場外のみなし労働時間制」は労働基準法第38条の2に定められていますが、これは1度会社を出てしまった営業マンが、実際に働いているかどうかわからない(ひょっとしたら喫茶店でさぼっているかもしれない)ようなときに、実際はどうあれ、労使で決定した時間を労働したものと「みなす」制度です。つまり、いちいち次の仕事を事業場からの指示を受けている場合は、単に労働を提供している場所が事業場外というだけで、事業場外のみなし労働時間制は適用できません。

Q.

当社はタイムカードで従業員の出退勤の管理をしていますが、打刻前におしゃべりをしたりする従業員がいて、退社時刻が5分から10分超過してしまい、残業計算などで苦労します。そこで出勤簿に戻そうと思うのですが、法的に問題はありますか?

A.

適正な時間管理を前提にした出勤簿方式であれば法律には触れません。労働基準法には時間管理に関しては特に定めがなく、タイムカードであろうと出勤簿であろうとそのほかのほうほうであろうと問題ありません。時間管理を容易にできるからといった理由でタイムカードを利用している会社が多いのですが、相談事例の会社のように、誤差や不正打刻というデメリットもあります。

Q.

所定労働時間中だらだらと仕事をして、残業を日常的にする状態を意図的につくり、残業代を請求する社員に対しても残業代を支払わなければならないのでしょうか?また、会社はこのような社員にどのように対処すればよいのでしょうか?

A.

まったく不必要な時間外労働に対しても割増賃金は支払わなければなりません。このような場合の対処法は部下がどのような仕事を行っていて、どれくらい業務時間をかけているかを管理職がしっかり把握し、業務の効率、重要性、優先順位を考慮したうえで、時間内に終了するよう指示しなければなりません。また、部下に怠慢な勤務態度が見られた場合には、部下に対してより効率的に業務を行うよう指導し、それでも改まらない場合は、就業規則に即して処分するしかありません。

Q.

年次有給休暇は前年分から消化せずに、当年分から消化してもよいのですか?

A.

労働基準法では、繰越分から消化せよとも当年分から消化せよとも定めてはいないので、どちらから消化しても法律違反にはなりません。時効消滅のことを考えると、古い有給休暇から消化する方が従業員想いになります。

Q.

もう1年も前に結婚した従業員が、今度の連休に新婚旅行に出かけるといいます。その時に使っていない結婚休暇を請求してきました。休暇を与えなくてはいけませんか?

A.

慶弔休暇は法定休暇ではないので、どのように定めることもできます。この場合、就業規則に「結婚休暇は発生時から何日以内に取得すること」などと規定してあれば、それを適用して拒否もできますが、そのような規定がないと、「いつ取得してもよい」と受け取られてもしかたありません。子のケースでは、結局話しあいで解決するほかありません。

Q.

傷病休職中の従業員が、「1日数時間程度の軽易な残業をするくらいなら就労可能である」との医師の診断を提出してきた場合、会社これに応じて復職させなければいけないのでしょうか?

A.

傷病休職の場合、休職期間中に治癒すれば復職となり、休職期間が満了しても治癒しなければ、就業規則に即して自然退職もしくは解雇ということになります。この「治癒」がどのようなレベルをいうのかが問題となります。判例では、治癒とは原則として従前の職務を通常に行える程度に回復したときをいいます。つまり、対象の従業員が休職前に就業規則や労働契約書に基づいて行っていた職務や労働条件での勤務が不可能な場合は、職場への復帰を認めないことは可能です。しかし、可能な範囲でほかの軽易な職務に就かせることを検討するといった、最大限の努力は会社としてすべきです。

Q.

今年定年を迎える従業員がいます。いったん退職して退職金などを清算してから、定年前と同じ勤務形態で嘱託として再雇用する予定でいます。この場合、年次有給休暇の取り扱いはどうしたらよいのでしょうか?いったん定年で退職しているので、それまでの年休は清算し、再雇用後最初の勤務日を起算日とすればよいのでしょうか?

A.

再雇用は、定年退職した者を嘱託などの身分で再び雇用する制度で退職を伴います。しかし退職を伴うからといっても、年休における勤続年数の算定においては、再雇用する日を起算日とすることはできません。厚生労働省では「定年退職までの期間も、勤続年数に通算しなければならない」という通達を出しています。このケースでは、勤務形態が定年前と同じということなので、付与する日数も定年前と同じということになりますが、これがもし労働条件を見直し、たとえば週3日の勤務形態に変わったとすると、勤続年数は定年前と通算されますが、付与される日数は勤務日数に応じたものとなります。

Q.

本人と会社の間で賃金の面で折り合いがつかず、本人が継続雇用を拒否した場合は法律違反になるのでしょうか?

A.

高年齢者雇用安定法は会社側に継続雇用制度の導入を求めているので、会社側に定年退職者の希望に合う労働条件での雇用を義務づけるものではなく、会社側が合理的な採用の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で労働条件などについての合意が得られず、結果として労働者が継続雇用されることを拒んだとしても、高年齢者雇用安定法違反とはなりません。

Q.

会社から借金がある従業員が退職届を出してきました。頭にきたので、借金を返済するまで退職は認めないようにしようと思います。どうしてもすぐに退職するというなら退職金を支払わなくても大丈夫ですか?

A.

退職問題は労働基準法上のことで、借金返済問題は民法上のことなので、別次元の問題として扱わなければなりません。特に退職を認めないということは、人身高速にもかかわる問題に発展する可能性があるので注意が必要です。退職金不支給については、就業規則にその定めがなければ不支給は認められません。就業規則に定めがある場合は、過去の判例によると従業員にどの程度の義務違反があって、それによって会社側にどの程度悪影響をおよぼしたかで、不支給が有効となるか無効となるかが分かれています。このケースのように借金未返済という理由だけだと、不支給は難しいでしょう。退職金を支給したあとに、それで借金を返済させるのが得策です。

Q.

勤務態度が悪く、仕事も真面目にやろうとしない従業員を解雇できますか?

A.

このレベルではいきなり解雇することはできません。問題の視点は2つあります。1つ目は就業規則に、これこれの場合には解雇するという規定が明確に示されているかどうかということです。2つ目は会社側、上司側からのこの問題に対する注意や教育指導あるいは始末書などの制裁は、これまでどうしていたかということです。つまり、けん責、減給処分といった処罰ならびに、教育指導を行ったうえで、それでもダメなときは、解雇が有効と認められる可能性が高くなります。

Q.

当社の退職金規程では、「懲戒解雇の場合、退職金は不支給」となっています。ある社員の重大な不祥事が発覚し、本人も罪を認めて反省していることもあり、当人の将来を考えて、本来は懲戒解雇とすべきところを諭旨退職として取り扱うことにしました。ただし、退職金は不支給としました。その場は当人も納得していたのですが、退職後数カ月が経過してから、自分は自己退職したのだから退職金を支払ってほしいと申し出てきました。支払う必要はあるのでしょうか?

A.

これを認めてしまうと、何のために温情をかけてやったのかわからなくなってしまいます。この問題は、(斉藤組事件 札幌地・昭和61年3月27日)にあるように、本人の起こした不祥事が懲戒解雇事由に相当する行為であるかぎり、退職金を支払う必要はありません。